旅路

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ほんの少し前のこと
さむいさむい大地に遅~い春が訪れた頃のことでした。

白一色だった大地の色が
若々しい芝色に染め上げられ
タンポポの花が咲き乱れ
わたる風にほんのり冷たさが残る朝
一人の若者は旅に出ることにしたのです。

若者は、これからの長旅にたくわえが必要だったので、
一生懸命働きました。
来る日も来る日も働いて、
がむしゃらにただ働いて眠るそんな生活を繰り返していました。
「生活の場に未来はない」
そう若者は考えていたのでした。

春が終わり、雨の季節も過ぎ、
十分な備えができた頃、
若者が旅立つ日となりました。

「地図もいらない、時計もいらない。
こころ一つでどこまで行けるだろうか。」
若者のバックには、聖書が一冊入っていました。
「私の財産はこれ一つきり、後は残していくものに全てを譲って出かけよう」

若者の旅路は、けれど寂しいものではありませんでした。
若者のこころには、
ふるさとと愛する人が
いつもいつもどこにでもどこまで行っても
一緒にあったからです。

若者の肉体は、誘惑に惑うこともなく
曲がりくねった細道を
その道のりを楽しむようにゆっくりと自分のペースで
感謝しながら歩んでいきます。

誰も人の罪の身代わりにはなれない。
誰も十字架のない人はいない。
そこには男も女も大人も子どももない。

自分の居場所を見つけるための旅路。
実はそれは日常の中に隠されている。
その事に気づく旅路。。。 
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by satsuki_ok | 2005-07-07 19:04 | パンの耳